今年は52件の展覧会を見た。好きな順番に当時Instagramに投稿した感想を残す。
絵画を好きになって、見に行く展覧会の傾向が変わりはじめた年だった。
あとは椅子の展覧会が多く開催されていた思い出がある。
クリストとジャンヌ=クロード "包まれた凱旋門" / 21_21 DESIGN SIGHT
さまざまなものを梱包してきたふたり。
今回は2021年9月にフランスの凱旋門を梱包するまでの計画、準備、実現を追っている。
ジャンヌ=クロードは2009年に、クリストは2020年に亡くなり、このプロジェクトの完成を目にすることがなかった。
アーティストがいなくなってもプロジェクトは進む。そのことに感銘を受けた。
プロジェクトに関わる人々は責任と誇りを持って成し遂げ、観衆の笑顔を呼び起こす。
キース・ヴァン・ドンゲン展 / パナソニック汐留美術館
対象を簡略化する匙加減と豊かな色彩で洗練された絵画の数々。
大人の背丈より大きい作品と向き合ったり、絵筆のあとや絵の具の盛りを観察したり、会場での鑑賞で魅力がよりわかる展覧会。
図録も購入した。日本では44年ぶりの個展だし、画集もなかなか手に入らないようなので持っておきたかった。
価格は3000円。最近行く展覧会ではこのあたりの価格が多い。去年までは2500円以内が多かった記憶なので、ここにも物価上昇の波が来ているのだろうか。
東北へのまなざし1930-1945 / 東京ステーションギャラリー
民藝が好きな人、モダンデザインが好きな人、こけしが好きな人、東北が好きな人にぜひ見てほしい展覧会。
私はこのうち3つ好きなのでとても楽しかった。
東北を旅したブルーノ・タウトと案内役の秋田の版画家・勝平得之が過ごした時間を、それぞれの書いたもので浮かび上がらせた展示がまずとてもよい。
タウトと勝平の交流はその後も続き、タウトの本「日本の家屋と生活」に勝平の版画が使われている。
今和次郎の「雪調(積雪地方農村経済調査所)」時代も厚く紹介されている。当時は住宅の設計もしていたとのこと。そしてあの精密かつユーモラスな絵の原画が数多く展示されときめいた。
郷土玩具に関する展示では、やはり好きな武井武雄の名前が出てくる。彼の著作で玩具収集が盛んになったという紹介であり武井の絵は展示されないが、名前が出ただけでうれしい。
ここでは地域ごとの特色あるこけしが圧巻。また、馬のおもちゃ・三春駒は実家に似たのがあったと思い出す。
図録は表紙がとてもかわいく、画像、文章ともに充実していて300ページほどある上に、最近のものにしては手頃な2400円。迷わず買った。こけしも買った。
フランソワ・ポンポン展 / 佐倉市立美術館
日本初の回顧展は全国5箇所の巡回で、佐倉は4番目。開催を知ってほぼ1年、待ちに待った。
初期の写実的な胸像から、代名詞となった動物彫刻まで網羅的に展示。
シロクマはもちろんのこと、フクロウのかわいさ、鹿の神々しさもよかった。
同じ動物を異なる素材や大きさで見られるのもおもしろい。
ポンポンの動物彫刻はつるんとシンプルな線が魅力のひとつだと思う。発表当時には毛並みや羽根を表現しない作風を揶揄する批評もあったそう。
歴史に残る作品は同時代からは賛否あるものかもしれない。
ジャン・プルーヴェ展 / 東京都現代美術館
フランス出身の建築家、デザイナー・プルーヴェの大規模な展覧会。
彼の設計した住宅が実際に展示されているのがすごい。ほか、使用されていた扉やルーバーなどの現物も。
模型や写真や図面を見るのが建築の展覧会だと思っていただけに嬉しい驚き。
椅子などの家具の展示も豊富。木材と金属のコンビネーションがかっこいい。
つながる琳派スピリット 神坂雪佳 / パナソニック汐留美術館
明治から昭和にかけて図案家・画家として活動した雪佳は、琳派の研究や蒐集も行っていた。
この展覧会は尾形光琳、酒井抱一ら琳派の作品からはじまり、雪佳の図案・工芸・絵画に移ってゆく。
琳派では中村芳中が好きになった。鹿や犬などをどことなく力の抜けたかわいさで描く。
雪佳の作品はどの分野でも構図がすばらしく、図案家(現代ならデザイナー)としての鍛錬を思う。
オルタナティブ ! 小池一子展 / 3331 Arts Chiyoda
alternative-kazukokoike.3331.jp
佐賀町エキジビット・スペースの人として知ったので、この部分の展示が豊富でうれしい。
当時展示を行った森村泰昌らの作品が並ぶ。
また、展覧会のキュレーションの仕事もすばらしい。
特に70年代の現代衣服の源流展、
80年代の上野リチ展は資料のパワーが強く、今すごく見たい。
他には田中一光との仕事、コピーを手がけた無印良品のポスターが充実していた。
多岐に渡る仕事を見られて満足。
みんなの椅子 ムサビのデザインⅦ / 武蔵野美術大学美術館
幅広い時代、ジャンルの約250脚の椅子。
しかも半分くらいは実際に座ることができる。楽しみつつ圧倒された。
猪熊弦一郎展 / 横須賀美術館
90年の人生で猪熊氏はさまざまな都市に住んだ。香川〜東京〜パリ〜従軍画家〜東京〜ニューヨーク〜ハワイ。
住む場所で作風が変わっていくのが感じられる。
好きな作品はパリ時代の「サクランボ」、従軍時代の「長江埠の子供達」。
また、三越の包装紙のモチーフとなった石も展示されていて貴重だった。
イッタラ展 フィンランドガラスのきらめき / Bunkamura ザ・ミュージアム
イッタラ社創立140年を記念した展覧会。
アアルトやトイッカがデザインしたアイコニックな作品が数多く展示される。
また、ガラス製品の製作に欠かせない金属や木の型(ガラスを流し込んでデザインした形にする)は初めて見るもので興味深かった。
型の素材によってガラス表面の質感に違いが出る。
異なる素材の型で作られたアアルトベースを比較鑑賞できるのはすばらしい。
フィンランドの自然や物語がモチーフの作品も多くあった。
サーリネン展でも出てきた「カレワラ」はいつか読まなくては。
一方で、冬の長い土地ならではの氷モチーフは北海道出身者には馴染みやすい。凍った湖に穴を開けて釣りをするというモチーフには、きっとワカサギ釣りみたいな感じだろうとイメージする。
トイッカの鳥がたくさん展示されていたのもよかったな。いい内容だった。